「保育園に預けるなんて、かわいそうねぇ」「こんなに小さいのに……」。義母のその一言が、胸に刺さったまま抜けない。悪気がないのはわかっている。でも、頭では理解できても心が追いつかない——そんな経験はありませんか。

カップルカウンセラーとして18年、延べ8,000組のご夫婦を見てきた筆者のもとにも「義母のかわいそうが止まらなくて限界です」という相談は少なくありません。この記事では、「かわいそう」がなぜこんなに痛いのか、その正体を解きほぐしたうえで、自分の心を守りながら義母との関係を整える3ステップをお伝えします。

「かわいそう」がこんなに刺さる3つの理由

義母の「かわいそう」は、ただの感想に聞こえるかもしれません。けれど受け取る側にとっては「あなたの育児は間違っている」という評価に変換されてしまうことがある。その仕組みを整理してみましょう。

① すでに抱えている罪悪感を刺激する

共働きで子どもを保育園に預けているお母さんの多くは、「本当にこれでいいのかな」という小さな不安を内側に持っています。義母の「かわいそう」は、その不安にぴたりと重なります。外から言われたことで、自分の中の罪悪感が一気に膨らむ構造です。

② 反論しにくい「善意の包装紙」で届く

「かわいそう」は、子どもへの愛情から出た言葉。だから「やめてください」とは言いにくい。感情を翻訳すると、受け取る側の中には「善意だから受け入れなきゃ」と「でも否定されている」が同時に走っています。この矛盾が、モヤモヤの正体です。

③ 繰り返されることで自己評価が削られる

一度なら流せる。けれど帰省のたびに、電話のたびに「かわいそう」を聞かされると、少しずつ「自分はダメな母親なのかもしれない」という自己疑念のループに入ります。2024年のPMC掲載研究(世代間コペアレンティングとストレス)でも、祖父母からの否定的な関わりが長期化すると親のストレスが慢性化しやすいことが指摘されています。

義母の「かわいそう」の裏にある3つの心理

ここで義母の側の感情も見ておきましょう。筆者の相談経験から分類すると、「かわいそう」の裏にはおおむね3つのパターンがあります。

パターン1:世代間の「当たり前」のズレ

義母が子育てをしていた時代は、母親が家にいるのが主流だった家庭も多い。その経験則から「小さな子を預けるのはかわいそう」と感じるのは、ある意味で自然な反応です。悪意ではなく、情報がアップデートされていないだけ。

パターン2:孫への愛着と無力感

孫ともっと一緒にいたい、でも育児の主導権は親にある。その距離感のもどかしさが、「かわいそう」という言葉に乗って出てくるケースがあります。

パターン3:自分の子育てへの承認欲求

「私は子どもが小さい間は家にいた」という自負のある義母にとって、嫁の異なる選択は自分の子育てを否定されたように感じることがある。「かわいそう」は自分の正しさを確認したい気持ちの表れでもあるのです。

どのパターンも根は孫と家族への愛情です。18年で「孫がかわいそう」と口にする義母を何百人も見てきましたが、純粋な悪意があったケースはほとんどありません。ただ——悪意がないからといって、受け取る側が傷つかないわけではない。ここが難しいところです。

心を守りながら伝える3ステップ

まず順番を整えましょう。義母に直接伝える前に、最初にやるべきは夫との認識合わせです。

ステップ1:夫に「予告」してから感情を共有する

いきなり「お義母さんのかわいそうが辛い」と切り出すと、夫は自分の親を否定されたと感じて防衛モードに入ることがあります。予告型コミュニケーションで、まず受信準備を整えてもらいましょう。

具体的にはこう切り出します。

「今日の夜、10分だけ聞いてほしい話があるんだけど、いい? 子どもが寝てからでいいよ」

筆者自身、家庭で揉めやすいテーマは「子どもが寝てから」と決めています。予告があるだけで夫の受け止め方は驚くほど変わる。そして話すときはIメッセージで感情から入ります。

「お義母さんに悪気がないのはわかってる。でもかわいそうって繰り返し言われると、私は自分の育児を全否定されたみたいで苦しくなるんだ」

主語を「私」にすることで、義母への攻撃ではなく自分の感情の共有として届きます。

ステップ2:義母へは「感謝+気持ち+1つだけお願い」で伝える

夫と足並みが揃ったら、義母への伝え方を二人で決めます。筆者がよくお伝えするのは、この3点セットです。

まず感謝。「いつも○○ちゃんのことを気にかけてくださってありがとうございます」。次に気持ち。「かわいそうと言われると、私たちなりに頑張っている分、少し辛くなってしまうんです」。最後にお願いを1つだけ。「保育園で楽しかった話を○○ちゃんに聞いてもらえたら嬉しいです」。

全面的に「やめてください」ではなく、義母の関わり方に方向転換を提案するイメージです。産後の義母との距離感について記事を書いた際にも感じたことですが、「排除ではなく調整」というフレームで伝えた方が、義母も夫も受け入れやすい。

ステップ3:「かわいそう」が出たら心の中で翻訳する

伝えた後も、すぐに100%止まるとは限りません。長年の癖ですから、ポロッと出ることはある。

そこで大切なのは受け取る側の「翻訳フィルター」を持っておくこと。義母が「かわいそうね」と言ったら、心の中で「=もっと孫と過ごしたいのね」と変換する。これだけで胸に刺さる角度が変わります。

義母の「かわいそう」は、翻訳してみれば「もっと関わりたい」という欲求の、ちょっと不器用な表現。こう捉えられるようになると自分を責めるループから抜け出しやすくなります。

それでも「かわいそう」が止まらないときの次の一手

3ステップを試しても変わらないケースは、経験上おおむね2〜3割あります。そんなときの選択肢も整理しておきましょう。

第三者の情報を橋渡し役にする。自治体が発行している「祖父母手帳」や、小児科医の育児コラムを「面白い記事があったんです」と自然に共有する方法です。嫁vs義母の対立構図を第三者情報で崩せると、義母のプライドを傷つけずに情報をアップデートできます。これは義母の「昔はこうだった」パターンでも有効な手法です。

「かわいそう」の代わりに言ってほしい言葉を渡す。「○○ちゃん、保育園で頑張ってるんだね」「ママもパパもお疲れさま」——こう言ってもらえたら嬉しいと具体例を示しておくと、義母も何を言えばいいかわかるので切り替えやすくなります。

会う頻度や通話の長さを調整する。心が消耗しているときに距離を取ること自体がセルフケアです。正解はお二人の中にあります。無理をして笑顔を作り続ける必要はありません。

FAQ

義母に直接言えないとき、夫から伝えてもらうだけでも大丈夫?

大丈夫です。むしろ最初は夫経由の方が義母も受け入れやすいことが多いです。その際、夫には「お母さんを責めるのではなく俺たちも頑張ってるから応援してほしいというトーンで伝えて」とお願いしておくと効果的です。

「かわいそう」と言われるたびにイライラする自分はおかしい?

おかしくありません。善意であっても繰り返し否定のメッセージを受け取れば、怒りや悲しみが出るのは自然な反応です。自分の感情を否定しないことが心を守る第一歩になります。

保育園に預けることは本当に子どもにとって「かわいそう」なの?

保育の質が確保された環境であれば、子どもの社会性や認知発達にポジティブな影響があることが複数の研究で示されています。大切なのは「一緒にいる時間の長さ」ではなく「一緒にいる時間の質」です。

義母が子どもに直接「ママがかわいそうなことしてるのよ」と言い始めたら?

子どもの前で親の育児を否定する発言は、親子の信頼関係に関わる安全ラインの問題です。この場合は感情ベースではなく事実ベースで「子どもの前ではその言い方を控えてほしい」と夫婦で一致した姿勢を見せて伝えてください。

参考文献