育休で「自分のお金」が消える感覚の正体
育休に入った途端、コンビニのコーヒー1杯に罪悪感を覚えるようになった——SNSにそんな声があふれるたびに、私もそうだったと思い出す。化粧品メーカーの広報を辞めてブログ一本で食べていこうと決めた直後、自分の口座残高がみるみる減っていくのを眺めながら、500円のランチすら「これ、家計から出していいのかな」と手が止まった。
育児休業給付金は、休業開始から180日間は賃金の67%、それ以降は50%が支給される。2025年4月からは出生後休業支援給付金と合わせて、最大28日間は80%(社会保険料免除により手取り10割相当)に引き上げられた。社会保険料の免除や非課税措置を考えれば、手取りベースでは想像ほど落ちないケースもある。
それでも、「自分の稼ぎ」が消えたという感覚は数字とは別の場所で痛む。この痛みの正体は金額の減少ではなく、「お金を自分の判断で使える自由」の喪失だ。
コーネル大学の2024年研究は、金融ストレスが高い人ほどお金の話し合いを避ける傾向を示している。つまり、つらいときほど黙る。黙るからズレが広がる。育休中の家計モヤモヤが長引く構造は、ここにある。
収入が変わったとき夫婦で揉める3つのパターン
言っちゃうけど、育休中のお金の揉め事は「金額」じゃなく「扱われ方」で火がつく。本音ベースで、よくある3パターンを整理してみる。
パターン1:折半ルールがそのまま残っている
共働き時代に「家賃は半々、光熱費も半々」で回していた夫婦が、育休に入っても同じルールを続けてしまうケース。収入が減った側は貯金を切り崩すしかなくなる。「なんで私だけ減っていくの」という不満が、じわじわ積もる。
パターン2:「家にいるんだから節約できるでしょ」
働いている側が無意識に支出をチェックし始めるパターン。悪気はない。でも、レシートを見て「これ要った?」と聞かれた瞬間、育休中の側は「監視されている」と感じる。お金の管理が、信頼の問題に変わる瞬間だ。
パターン3:「お小遣いをもらう」側になる屈辱感
自分の収入がない状態で、パートナーから生活費を「渡される」構図。対等だった関係に上下が生まれたように感じてしまう。金額の多寡は関係ない。「もらう」という動詞そのものが心を削る。
家計ルールを見直す3ステップ
うちの夫婦は、お金の話をずっと避けていた時期がある。突破口になったのは、ある日テーブルに家計簿アプリの画面をぽんと置いたこと。「ちょっとこれ見て」——それだけで、感情ではなく数字が会話の主語になった。育休中の家計見直しにも、同じ原理が使える。
ステップ1:「うちの今」を数字で並べる
育休前の手取りと、育休中の給付金の差額を一覧にする。家計簿アプリでもスプレッドシートでも紙でもいい。大事なのは、二人で同じ画面を見ること。
「こんなに減るの?」と驚くかもしれないし、「思ったより減ってないね」と安心するかもしれない。どちらでも構わない。事実を共有するだけで、「私ばかり我慢している」が思い込みなのか、それとも本当にそうなのかが見えてくる。
ステップ2:「個人枠」を家計の正式項目にする
うちでは年1回の予算ミーティングで、夫婦それぞれの「自由に使えるお金」を最初に決めている。育休中も同じだ。金額は減っていい。ゼロはダメ。
月3,000円でも5,000円でも、「これは自分の判断で使っていいお金」と合意できれば、コンビニのコーヒーに罪悪感を覚えなくなる。個人枠がないから「もらう」感覚になる。正式項目にすれば「合意した予算」に変わる。
ステップ3:見直し周期をセットで決める
育休中の家計ルールは「暫定」でいい。大事なのは、いつ見直すかを最初にセットで決めておくこと。復職の3か月前、あるいは給付金の割合が67%から50%に切り替わるタイミングが自然な見直し時期になる。
「このルールは○月まで。そこでまた話そう」と決めておけば、今の不満を飲み込まなくて済む。飲み込んだ不満は、必ずどこかで爆発する。3年飲み込んで大喧嘩になった私が言うんだから間違いない。
「申し訳ない」を手放していい理由
育休を取った側が「稼いでないのに使って申し訳ない」と感じるのは、収入=貢献だという思い込みがあるから。でも、育児も家事も「無収入の労働」であって、貢献がゼロになったわけじゃない。
内閣府の調査では、家事・育児・介護などの無償労働の貨幣換算額は年間で数百万円規模にのぼるとされている(2026年7月現在の最新値は内閣府経済社会総合研究所で確認できる)。数字にすれば「稼いでいない」は事実と違うことがわかる。
申し訳なさを飲み込むのではなく、事実で上書きする。それが、育休中のお金のモヤモヤを解くいちばん確実な方法だと思っている。
FAQ
育休中の育児休業給付金はいくらもらえますか?
休業開始から180日間は賃金日額の67%、181日目以降は50%が支給されます(2026年7月現在)。2025年4月からは出生後休業支援給付金と合わせて、最大28日間は80%(手取り10割相当)に引き上げられています。
育休中の生活費の負担割合はどう決めればいいですか?
収入比率に応じて分ける方法が不公平感を生みにくいとされています。ただし正解はひとつではなく、二人が納得できるルールを話し合って決めること、そして見直し周期をセットにしておくことが大切です。
育休中にパートナーに家計の見直しを切り出すタイミングは?
育休に入る前がベストですが、途中からでも遅くありません。家計簿アプリの画面を見せながら「ちょっとこれ確認しよう」と切り出すと、感情的にならずに話しやすくなります。
育休中に「自分のお金がない」と感じるのは普通のことですか?
とても一般的な感覚です。金額ではなく「自由に使える感覚」の喪失がつらさの本質であり、夫婦で個人枠を合意するだけで軽減できます。
参考文献
- 出生後休業支援給付金について — 厚生労働省, 2025年
- 育休中の生活費どうしてる?折半は公平? — OsidOri(オシドリ)マガジン
- 無償労働の貨幣評価 — 内閣府経済社会総合研究所






