7割が「いつか来る」と思っているのに、話し合えているのはたった25%

言っちゃうけど、親の介護費用の話って「いつかしなきゃ」と思いながら何年も放置しがちなテーマの筆頭だと思う。

介護用品レンタルのヤマシタが2024年6月に45〜69歳の男女55,515人を対象に実施した「親の介護に関する意識調査」によると、約7割が将来的に親の介護が必要になると意識している。それなのに、実際に家族と介護について話し合ったことがある人はわずか25%程度。残りの75%は「なんとなく不安」を抱えたまま、日々をやり過ごしている。

私もそうだった。義父の物忘れが増えてきた頃、夫に「そろそろお義父さんのこと、ちょっと話さない?」と切り出そうとして、でも「まだ元気だし」と自分に言い訳して3年近く先延ばしにした。結局、義父が転倒して入院したタイミングで慌てて話し合うことになった。あのとき、もう少し早く始めていたら、もっと冷静に話せたはず。

この記事では、「まだ早い」が危険な理由と、介護費用の現実的な数字、そして夫婦で切り出すための3ステップを本音ベースでまとめた。

「まだ早い」が危険な3つの理由

介護の話を先延ばしにしてしまうのは、ある意味当然のことだと思う。親が元気なうちに「倒れたらどうする?」なんて、なかなか口にできない。

でも、先延ばしが招くリスクは想像以上に大きい。

理由① 介護は「ある日突然」始まる

脳卒中、転倒による骨折、認知症の急な進行——介護が始まるきっかけの多くは「突然」だ。準備期間なんてもらえない。話し合いをしていないと、いきなり「誰が面倒を見るのか」「費用はどこから出すのか」を感情的な状態で決めることになる。冷静な判断なんて、まず無理。

理由② 親の資産状況は、元気なうちにしか聞けない

認知症が進んでからでは、預貯金の場所も保険の内容も確認できなくなる。銀行口座が凍結されるケースだってある。親が元気で判断力があるうちに「どんな備えがあるか」を共有しておかないと、子ども世代が全額負担する事態になりかねない。

理由③ 夫婦の「温度差」は時間が経つほど広がる

自分の親と相手の親では、当然ながら緊迫度が違う。自分の母が最近足腰が弱ってきた——そう感じているのに、パートナーは「まだ大丈夫でしょ」と軽く流す。この温度差、放置すると不満の種になる。お金の不安レベルのズレと同じ構造で、「自分だけが心配している」という孤立感がじわじわ関係を蝕む。

親の介護費用、実際いくらかかる?——数字で見る現実

公益財団法人 生命保険文化センターが2025年1月に公表した2024年度「生命保険に関する全国実態調査」のデータを見てほしい。

介護にかかる費用の平均(2024年度調査):

  • 一時的な費用(住宅改修、介護用ベッドの購入など): 平均47.2万円
  • 月々の費用: 平均9.0万円
  • 平均介護期間: 4年7ヶ月(55ヶ月)
  • ざっくり計算すると、一人あたり総額 約542万円

ただし、これは「平均」の話。月額15万円以上かかっている人が全体の19.3%——つまり5人に1人はこの水準を超えている。在宅介護なら月額平均5.3万円、施設利用なら月額平均13.8万円と、場所によっても大きく変わる。

しかもこれは「親一人分」の数字。夫婦それぞれの親が2人ずついれば、最大4人分の介護が発生する可能性がある。全部が同時に来るわけではないにしても、「うちには関係ない」と言い切れる人はほとんどいないはず。

夫婦で「親の介護費用」を話し合う3ステップ

うちの場合、お金の話を切り出すきっかけになったのは家計簿アプリの画面だった。数字を先にテーブルに置くと、「誰が悪い」じゃなくて「うちの現実」として話が始まる。介護費用の話も同じ方法が使える。

ステップ① 「介護費用」と言わずに、数字だけ見せる

「ちょっとこの記事見て」でいい。生命保険文化センターの「介護にかかる費用」のページを見せるだけ。月9万円、総額542万円——この数字を二人で眺めるところから始める。

「介護の話をしよう」と正面から切り出すと、相手は身構える。でも「こういうデータがあるんだけど」なら、ニュースを共有するのと同じ温度感で入れる。お金の話と一緒で、感情を先に出すと防御反応が出るから、数字を先に置く。それだけで空気が変わる。

ステップ② お互いの親の「今」を棚卸しする

数字を見た流れで、「うちの親はどうだろう」に話を移す。ここで確認したいのは3つだけ。

  • 健康状態: 最近の通院状況、持病、物忘れの頻度
  • 経済状況: ざっくりでいい。年金の有無、預貯金がありそうかどうか、持ち家かどうか
  • 本人の希望: 在宅がいいのか、施設でもいいのか(聞けていなければ「今度帰省したときに聞いてみようか」でOK)

全部を一度に把握する必要はない。「わからないこと」が可視化されるだけでも大きな前進。わからないことがわかれば、次に何を調べればいいかが見えてくる。

ステップ③ 「うちのルール」を仮決めする

最後に、「今の段階で決められること」だけ仮で決める。完璧なプランじゃなくていい。

  • 介護費用はまず親の資産から出す。不足分は兄弟姉妹で分担するのか、夫婦の家計から出すのか
  • 夫婦の家計から出す場合、月いくらまでなら生活に影響しないか
  • この話を見直すタイミング(年1回の家計ミーティングに組み込むのがおすすめ)

うちは毎年やっている年1回の予算ミーティングに「親の介護」という項目を追加した。金額はまだゼロ円だけど、「この話題を定期的に確認する」という合意があるだけで、不安のサイズがまったく違う。いざというときに「何も決まっていない」状態を避けられる、それだけで十分な備えになる。

「うちはまだ大丈夫」が一番危ない

介護の話は、切り出すタイミングが早すぎることはない。遅すぎることはあっても。

大事なのは、完璧な介護プランを作ることじゃない。「この話をしたことがある」という事実を夫婦の間に作ること。一度でも話せていれば、いざというときに「あのとき話したよね」から始められる。ゼロから話すのとは天と地の差がある。

まずは今夜、スマホでこの記事を開いて「ちょっとこれ見て」と言ってみてほしい。5分でいい。数字を見るだけでいい。その5分が、数年後の自分たちを助ける。

FAQ

親の介護費用は子どもが全額負担しなきゃダメ?

基本的に介護費用はまず本人の年金や貯蓄から出すのが原則。それでも不足する場合に子ども世代が補う形になる。「全額子ども負担」は最後の手段であって、最初の前提にする必要はない。

夫の親と自分の親、どっちを優先すべき?

「どっちを優先」ではなく、それぞれの状況を可視化することが先。健康状態・経済状況・きょうだいの有無を整理すると、どちらにどの程度の備えが必要か見えてくる。感情論で優先順位をつけると揉めるので、数字ベースで話すのがコツ。

いつから話し合いを始めるべき?

親が60代後半に入ったら、一度は話しておきたい。ヤマシタの調査では45〜69歳の7割が介護を意識しているのに、実際に話し合っているのは25%。「まだ元気だから」は話し合いを始めない理由にはならない。元気なうちだからこそ冷静に話せる。

パートナーが「まだ早い」と取り合ってくれないときは?

直接「介護の話をしよう」と切り出すのではなく、データや記事を見せるところから始めてみて。生命保険文化センターの調査結果や、身近な人の介護経験談など、第三者の情報を起点にすると「うちの問題」ではなく「世の中の話題」として入りやすくなる。

参考文献