「義母がまた、うちの子の写真をインスタに載せてる……」
スマホの通知を見て、胸がざわざわする。タグ付けまでされている。でも、かわいがってくれている気持ちはわかるから、「やめてください」のひと言が出てこない。
カップルカウンセラーとして18年、8,000組を超える夫婦の相談を受けてきましたが、ここ数年で急増しているのが、この「義母のSNS投稿」問題です。お菓子をあげすぎるとか、育児に口出しするとか、義母との摩擦にはいろいろなパターンがありますが、SNSの写真問題は「子どもの安全」が絡むぶん、我慢できるラインを超えやすい。
でも、大丈夫です。まず順番を整えましょう。感情を翻訳すると、伝えたい気持ちは必ず届けられます。この記事では、義母のSNS投稿に「やめて」が言えないときの伝え方を3ステップで整理していきます。
義母が孫の写真をSNSに載せる3つの心理
まず知っておいてほしいのが、義母に悪意があるケースはほぼゼロに近いということ。18年カウンセリングをしてきて、孫の写真を「嫌がらせ」で載せていた義母に出会ったことは一度もありません。
義母がSNSに孫の写真を載せる裏には、だいたい3つの心理があります。
1つ目は「見せたい」。シンプルに、かわいい孫をみんなに見てほしい。友人や親戚への「見て見て!」です。対面でアルバムを広げるのと同じ感覚で、SNSに投稿しています。デジタルに置き換わっただけで、行動の動機は昔と変わっていません。
2つ目は「つながりたい」。孫がいる友人同士のコミュニティで、「うちもこんなに大きくなったのよ」と会話のきっかけにしている。退職後にSNSが社交の場になっている義母にとって、孫の写真は最強のコンテンツなんです。
3つ目は「祖母としての存在証明」。孫とのかかわりを発信することで、自分がこの子にとって大切な存在であると確認したい。承認欲求に近い心理で、子育てを終えて役割が減った世代に見られやすいパターンです。
どの心理も、根っこは「孫がかわいい」「かかわりたい」という愛情。ただ、その表現方法がデジタル時代のリスクと噛み合っていない。ここがすれ違いの正体です。
「やめて」が言えない3つの壁と「シェアレンティング」という視点
子どもの写真をSNSに投稿する行為は、近年「シェアレンティング(sharenting)」と呼ばれ、世界的に議論されています。2023年にPMC(米国国立医学図書館)に掲載された研究レビューでは、親や祖父母のSNS投稿が子どもの肖像権やデジタルアイデンティティに影響を与えると指摘されました。
知識としてはわかっていても、「やめてください」はなかなか言えない。相談者の声を聞いていると、言えない理由は3つに整理できます。
感謝のプレッシャー。「かわいがってくれてるのに文句を言うなんて」。この罪悪感が口をふさぎます。産後の義母ヘルプ問題でもよく見る構造で、感謝と苦しさは両立するものなのに、感謝が先に立つと苦しさを言葉にできなくなる。
関係悪化への恐怖。「嫁が孫を取り上げようとしてると思われたらどうしよう」。嫁姑関係がこじれることへの不安が、黙らせます。
夫が動かない壁。「旦那に言ってもらいたいけど、'うちの親が悪いわけ?'と取り合ってくれない」。ここでストレスが行き場を失って、一人で抱え込んでしまう。
感情を翻訳すると、あなたの本音はこうです。「孫をかわいがってくれる気持ちは嬉しい。でも、わが子の安全は自分の手で守りたい」。表面の「やめて」の下に、感情層の不安があり、さらに欲求層の「守りたい」がある。この構造がわかると、伝え方の糸口が見えてきます。
気持ちを届ける3ステップ
義母との境界線を引くとき、大事なのは中身より順番です。以下の3ステップで整理してみてください。
ステップ1:まず夫に「予告」する
いきなり義母に直接言うのではなく、まず夫に話を通す。これが鉄則です。
うちでも揉めやすい話題は「子どもが寝てから」と決めていて、夫と二人の時間で切り出すようにしています。予告型コミュニケーションで、受信モードに切り替えてもらうのがコツです。
たとえばこう。
「ちょっとお義母さんのSNSのことで相談したいんだけど、今夜子どもが寝たあとに10分だけ時間もらえる?」
予告があるだけで、夫の反応はまるで変わります。突然「お義母さんのSNSやめさせて」と言われるのと、心の準備ができている状態で聞くのでは、防衛反応の出方がまったく違う。
ステップ2:感情から入って、Iメッセージで伝える
夫に話すとき、「お義母さんが勝手に写真を載せるのが嫌」と事実から入ると、夫は「うちの母を責めてる」と受け取りがちです。
順番を変えます。感情→事実→欲求の順で。
「お義母さんが孫をかわいがってくれるのはすごく嬉しい(感情)。ただ、SNSに写真が載っているのを見ると、知らない人の目に触れるんじゃないかって不安になるの(事実+感情)。載せる前にひと声かけてもらえると安心できるんだけど(欲求)」
「やめて」ではなく「ひと声かけてほしい」。全面禁止ではなくルールの共有として伝えると、夫も義母も受け入れやすくなります。
ステップ3:義母へのお願いは「1つだけ」具体的に
義母に伝える段階では、お願いを1つに絞ること。あれもこれも一度に言うと、責められている感覚になってしまいます。
お願いの例はこう。「載せる前に一度LINEで聞いてもらえると安心します」
これだけです。「SNSは全部やめて」でも「鍵アカにして」でもなく、「聞いてから載せてね」という1つのルール。このハードルの低さが、義母の「わかったわよ」を引き出す余白をつくります。
以前、相談者の方が「義母にリスクを全部説明したら逆ギレされた」とおっしゃっていました。正論から入ると、相手は自分の行動を否定されたと感じる。だから感情から入って、お願いは1つだけ。この順番です。
それでもやめてくれないときの「次の一手」
正直に言うと、一度伝えてすぐにやめてくれるケースばかりではありません。カウンセリングの実感では、約3割は最初のステップ後にも変化が見られない。でも「変わらない」と「まだ届いていない」は違います。
第三者の情報を使う。「小児科の先生に、子どもの写真はSNSに出さないほうがいいと言われました」と、嫁vs義母の対立構図を崩す。自治体の子育て安全パンフレットを「こんなのもらったんです」と渡すのも有効です。第三者の声は、こちらが直接言うよりもずっと届きやすい。
写真の共有方法を代替案で提案する。「家族だけのグループLINEにアルバムを作りませんか?」と提案すれば、義母の「孫の写真を見せたい」欲求は満たしつつ、公開範囲を限定できます。排除ではなく、関わり方の調整。
安全に関わる写真だけは曖昧にしない。制服・通園バッグ・自宅が特定できる背景が写り込んだ写真は、場所の特定やストーカーのリスクにつながりえます。カスペルスキーの調査でも、SNSの写真から住所や学校を特定される危険性が指摘されています。ここだけは、感情的にではなく事実ベースで、はっきり伝えてください。正解はお二人の中にありますが、安全のラインだけは親が引くものです。
FAQ
義母のSNS投稿は法的に問題にならないの?
子どもにも肖像権やプライバシー権が認められており、保護者の承諾なく公開アカウントに投稿する行為は法的に問題となりうると法律専門家が指摘しています。ただし、まずは対話での解決を優先し、法的手段は最終手段と考えるのが現実的です。
義母に直接言わず、夫に任せていいの?
第一歩は夫を通すのがベターです。ただし「夫に丸投げ」ではなく、伝えてほしい内容と言い方を一緒に整理してから頼みましょう。夫が伝えきれない場合は、夫婦そろって義母と話す場を設けるのもひとつの方法です。
「もう写真を送らない」は行きすぎ?
いきなり写真を送らなくなると、義母は「孫に会わせたくないのか」と受け取る可能性があります。まずはルールの共有を試みて、それでも改善しない場合に写真の共有方法を限定するという段階を踏むほうが、関係を壊しにくいです。
鍵アカ(非公開アカウント)にしてもらうのは現実的?
提案としてはありですが、義母世代にとってSNSの設定変更はハードルが高いことも。「一緒に設定しましょうか」と手伝う姿勢で提案すると、拒否感なく受け入れてもらえるケースがあります。
参考文献
- Sharenting Syndrome: An Appropriate Use of Social Media? — PMC / National Library of Medicine, 2023
- シェアレンティングとは — カスペルスキー
- 「子どもの写真」をSNSに載せるのは法的にNG? 「肖像権」「プライバシー権」の侵害になりうる — 東洋経済オンライン
- 祖父母のSNS投稿で子どもにトラブル! じいじばあばに伝える写真のリスクとマナー — コクリコ(講談社)






