「お小遣い、もうちょっと上げてほしいんだけど」。夫にそう言われたとき、私の口から出たのは「どこに使ってるの?」だった。本音ベースで言うと、3万円で足りないはずがないと思っていた。でも夫は黙った。その沈黙が、3年続いた。

フコク生命が2025年に全国4,700人を対象に行った調査では、夫婦のお小遣い全国平均は月28,054円。2023年の同調査(20,715円)から約7,000円上がっている。物価が上がっているのだから、お小遣いだって上がって当然のはず。なのに、金額の話になると空気が固まる夫婦は多い。

言っちゃうけど、お小遣い問題の正体は「金額」じゃない。相手の使い方が見えないこと。自分の我慢が報われていない気がすること。つまり、信頼とプロセスの問題だ。

お小遣いの「正解」がない理由

ネットで検索すると「手取りの10%が目安」「夫3万円・妻2万円が相場」といった数字が並ぶ。でも、そういう平均値を夫に見せて「うちは平均だよ」と言ったところで、何も解決しなかった。私もそうだった。

株式会社Clamppyが2025年5月に既婚者1,236人を対象に行った調査がある。お小遣いが月2万円未満の人は、3割以上が「不満がある」と回答していた。一方で、金額が同じ2万円未満でも「配偶者への不満がない」と答えた人は9割を超えていた。

ここに鍵がある。金額の大小そのものが不満を生むのではなく、「この金額に自分が納得しているかどうか」が分かれ道になる。月5万円でも押しつけられた数字なら不満は出る。月1万5千円でも自分で選んだ金額なら折り合える。

お小遣いで揉める夫婦の3パターン

これまでブログで家計相談を受けてきた中で、お小遣いの揉め方にはだいたい3つの型がある。

パターン1:「何に使ってるの?」の監視型

管理する側が使途を細かく確認する。相手は「信用されていない」と感じて黙り込む。うちがまさにこれだった。夫のコンビニコーヒーのレシートを見て、ため息をついていた自分が恥ずかしい。

パターン2:「足りないけど言えない」の我慢型

角を立てたくなくて、昼食を抜いたり、飲み会を断ったりしている。Clamppyの同調査でも、お小遣いが少ないと感じている人の多くが配偶者には伝えていなかった。コーネル大学の研究が示す「金融ストレスが高い人ほど話し合いを避ける」という逆説とぴったり重なる。言えないから不満が溜まり、不満が溜まるからますます言えなくなる。

パターン3:「生活費から抜いてる」のグレーゾーン型

お小遣い制のはずなのに、食費や日用品のレシートに自分のものを紛れ込ませている。これは金額の問題ではなく、ルールが合意になっていない証拠だ。Journal of Financial Therapyに掲載された研究でも、家計管理の透明性が低いカップルほど関係満足度が下がることが確認されている。

3年揉めた私たちが辿り着いた「合意のお小遣い」3ステップ

うちの場合、お小遣い戦争に終止符を打ったのは「年1回の予算ミーティング」だった。大げさに聞こえるかもしれないけれど、やることはシンプル。

ステップ1:数字を先に見せる

家計簿アプリの画面をテーブルに置く。これだけ。

「お小遣いの話をしよう」と切り出すと身構えるけれど、アプリの画面を見せて「今月の全体、こうなってるんだけど」と始めると、主語が「あなた」から「うちの家計」に変わる。私がこの方法に気づいたのは、何年もお金の話を切り出せなかった末に、ある晩テーブルにスマホを置いたのがきっかけだった。数字が間に入ると、感情のトゲが引っ込む。

ステップ2:「使いたいお金」を3つずつ書き出す

夫婦それぞれが「これだけは自由に使いたい」と思っているものを3つ書く。夫は「ランチ代・本・ガジェット」、私は「カフェ代・美容院・ポッドキャスト収録の雑費」だった。全部を叶える必要はない。大事なのは「相手が何にお金を使いたいと思っているか」を知ること。

夫の「ガジェット」を見たとき、正直「また?」と思った。でも夫は私のカフェ代を見て何も言わなかった。お互いの「無駄遣い」は、相手にとっての「必要経費」だったのだ。

ステップ3:金額と見直し周期をセットで決める

書き出した「使いたいもの」をベースに、現実的な月額を決める。ここで重要なのは、金額だけで終わらせないこと。「半年後にもう一回見直そう」と見直し周期もセットにする。

うちは年1回の予算ミーティングで大枠を決めて、月1回5分だけ「先月どうだった?」と確認している。これを始めてから、3年揉め続けた小遣いの話が「合意の数字」に変わった。揉め事が消えたのは金額が上がったからじゃない。「二人で決めた」という事実があるからだ。

「正解の金額」より「正解のプロセス」

共働き夫婦1,000人調査では、夫の平均は34,503円、妻は28,820円。約5,700円の差がある。この差を「不公平だ」と感じるか「うちはこれで合意してる」と思えるかは、決め方しだいだ。

お小遣いの相場なんて、世帯収入も家族構成も住んでいる場所も違うのだから、他の家と比べても意味がない。うちの正解は、うちの中にしかない。ただし、その正解を「片方が決めて片方が従う」で出してしまうと、金額がいくらでも不満は消えない。

お小遣い制そのものが悪いわけでもない。制度の問題じゃなく、合意の有無の問題。見える化して、書き出して、一緒に決める。その3つをやるだけで、「足りない」「使いすぎ」のループは止まる。

FAQ

お小遣いの金額は手取りの何%が目安ですか?

「手取りの10%」とよく言われますが、あくまで目安であり正解ではありません。フコク生命の2025年調査では全国平均28,054円ですが、世帯収入や家族構成で大きく変わります。大事なのは%の計算より、夫婦で合意していることです。

お小遣いを上げてほしいと言い出せません。どうすれば?

「お小遣いを上げて」ではなく、家計簿アプリの画面を見せながら「うちの家計、今こうなってるんだけど」と全体の話から入ると切り出しやすくなります。主語を「私」から「うちの家計」に変えるだけで、防御反応がぐっと下がります。

お小遣い制がつらいのですが、廃止すべきですか?

つらさの原因が「金額」なのか「自由のなさ」なのかで対応が変わります。金額なら見直し、自由度なら使途を問わない「個人枠」として家計に組み込む方法もあります。制度より合意プロセスの有無が重要です。

妻と夫でお小遣いの金額に差があるのは不公平ですか?

金額の差そのものが問題になるのではなく、その差に双方が納得しているかがポイントです。必要な出費の内容は人によって違うため、同額にこだわるより「なぜこの金額か」を共有するほうが公平感は高まります。

参考文献