「別にしたいわけじゃない。でも、触れてもらえないのがつらい」——この言葉、心当たりがある人は少なくないはずです。
セックスレスの悩みって、周囲には「体の不満でしょ?」と片付けられがち。でも本音ベースで言うと、つらさの芯にあるのは「自分は愛されているのか」という確認の手段がなくなることだったりします。
この記事では、セックスレスの"本当のつらさ"が体の問題ではなく愛情確認の枯渇にあるケースについて、心理学の愛着理論をベースに掘り下げます。2024年〜2026年の調査データや専門家の知見もあわせて紹介します。
「したいわけじゃないのにつらい」は変じゃない
言っちゃうけど、この感覚を持っている人は本当に多いです。私もそうだった。産後2年くらいのとき、夫との関係がどんどん事務的になっていって、「子どもの予定」「買い物リスト」「明日のゴミ出し」——会話がそれだけになった時期がありました。
体の関係を求めたかったかというと、正直そうでもなかった。疲れてるし、夜は子どもと一緒に寝落ちする毎日。でも、手をつないでくれない、目を見て笑ってくれない。隣にいるのに「いないみたい」な距離感がじわじわ効いてくるんです。
浜松町第一クリニックの「セックスレスに関する意識と実態調査2023」によると、20〜40代既婚者のうちセックスレス状態にある人は全体の44.0%。女性に限れば49.3%にのぼります(浜松町第一クリニック, 2023)。ほぼ2人に1人。
その中で「性的欲求があるからつらい」人と、「愛情の断絶そのものがつらい」人は、まったく違う問題を抱えています。後者のほうが言語化しにくく、だからこそ相談もしづらい。
愛着理論が教えてくれる「触れてほしい」の正体
心理学に「愛着理論(アタッチメント・セオリー)」というものがあります。もともとは乳児と養育者の絆を説明する理論ですが、大人のパートナーシップにもそのまま応用されている考え方です。
カリフォルニア大学デイビス校のフィリップ・シェーバー教授らの研究によれば、成人の愛着パターンは性的親密さの体験と深く結びついており、関係の中で安心を感じられないとき、身体接触への渇望が高まることが示されています(Mikulincer & Shaver, 2007)。
つまり「触れてほしい」の裏にあるのは、「この人はまだ私のそばにいてくれるのか」という安全確認。セックスそのものより、その行為を通じて得ていた安心感がなくなることが問題の核なんです。
2026年のState of Intimacy Reportでも、現代カップルは性行為の頻度よりも「感情的なつながり」や「共に過ごす時間の質」を重視する傾向がはっきり出ています(2026 State of Intimacy Report)。「回数」じゃなくて「つながりの実感」。ここがポイントです。
産後は「愛情確認のチャンネル」がズレやすい
産後にセックスレスが起きやすい理由は、ホルモンや体力だけじゃありません。もっと根っこにあるのは、夫婦それぞれの「愛情の伝え方」が噛み合わなくなること。
たとえば一方は「肌の触れ合い」で安心を確認するタイプ。もう一方は「家事や育児を手伝うこと」で愛情を示すタイプ。産前はそのズレが問題にならなかったのに、産後、時間もエネルギーも削られて、お互いの"愛情言語"が届かなくなります。
日経新聞の報道(2024年1月)によると、子どもを望む30代既婚者でも4割がセックスレス傾向にあるそうです(日本経済新聞, 2024)。「子どもが欲しいのにレス」という矛盾の背景にも、愛情の伝え方のすれ違いがあるのだと感じています。
私自身、かつてセックスレスについて夫を一方的に責める記事を書いて、大反省したことがあります。「なんで触れてくれないの」「私のことどうでもいいの」と。でもそれは私側の見え方でしかなかった。夫は夫で「疲れてるだろうから休ませてあげたい」と思っていた。相手の視点を1段はさむだけで、見える景色はまるで変わりました。
セックス以外で「愛されている」を確認する3つの方法
ここからは実践の話です。レス状態のままでも、愛情確認のチャンネルを増やすことで「つらさ」は確実にやわらぎます。
1. 「3秒タッチ」を日常に入れる
すれ違いざまに肩に触れる。おはようのとき手を一瞬だけ握る。3秒で終わる、性的な意味のないタッチです。臨床心理士の心理オフィスKでも、非性的スキンシップの回復がレス解消の第一歩として推奨されています(心理オフィスK)。愛着システムは小さな接触にもちゃんと反応します。
2. 「週1・15分」の連絡事項じゃない対話
今週うれしかったこと。しんどかったこと。テーマは何でもいい。うちでは土曜の朝、子どもがパンを焼いている横で夫と話す15分を作るようになりました。内容は決めません。ただ「聞いてもらえた」という実感がお互いに残ればそれでいい。
3. 「ありがとう」を具体的に言う
ただの「ありがとう」は流れます。「朝ゴミ出ししてくれたの見て、ちょっと楽だった。ありがとう」——この一言が違う。「見てくれてるんだ」という安心が生まれます。感謝の具体化は、愛情確認の最小単位。
大事なのは、これらを「レスの代わり」としてやらないこと。夫婦の関係そのものを温め直すために取り組む。体の関係が戻るかどうかは結果であって、目的にしないほうが結局うまくいきます。
FAQ
セックスレスで「愛されていない」と感じるのはおかしいですか?
おかしくありません。愛着理論の研究でも、身体接触は安心感の確認手段として機能するとされています。触れ合いがなくなれば不安になるのは自然な反応です。
夫にレスのつらさを伝えたいけど、どう切り出せばいいですか?
「セックスがしたい」ではなく「触れてもらえないと寂しい」と、自分の感情を主語にして伝えるのがポイントです。相手を責める形ではなく、気持ちを開示する形のほうが届きやすくなります。
スキンシップを増やそうとしても夫が乗り気じゃない場合は?
いきなり身体接触を増やすより、まず「ありがとうの具体化」や「15分の対話タイム」など言葉のチャンネルから始めてみてください。安心が蓄積すれば、触れ合いのハードルも自然と下がっていきます。
産後何年くらいでスキンシップは戻りますか?
個人差が大きく、「〇年で戻る」とは言い切れません。ただ非性的スキンシップから意識的に取り組んだ夫婦は、1〜2年で関係の質が変わったという声が多いです。焦らず「小さな接点の積み重ね」を意識してみてください。
参考文献
- セックスレスに関する意識と実態調査2023 — 浜松町第一クリニック, 2023年
- Psychodynamics of Attachment and Sexuality — Mikulincer & Shaver, 2007年
- 2026 State of Intimacy Report — Gigi Engle, 2026年
- セックスレス、子を望む30代既婚でも4割 — 日本経済新聞, 2024年1月
- セックスレスからの脱出!臨床心理の視点 — 心理オフィスK






