「また断られた」——ベッドの隣で黙ってスマホを触る夫の横で、天井を見つめた夜が何度あっただろう。
私もそうだった。産後から始まったレスは、気がつけば6年。誘っても「疲れてる」「明日早い」。言っちゃうけど、断られる側のつらさって、想像以上に自分を削る。「私に魅力がないの?」「もう女として見られてないの?」——そんな問いが頭のなかでぐるぐる回って、眠れなくなる。
でも、あるとき気づいたことがある。夫の「したくない」には、私が想像していたのとはまるで違う理由があった。この記事では、夫にセックスを断られ続けてつらいと感じている方に向けて、「したくない男性」のリアルな心理と、2023年の大規模調査データ、そして私自身が完レスの向こう側でたどり着いた歩み寄りの方法をお伝えします。
夫の「したくない」は珍しくない——調査データが示す現実
まず知っておいてほしい事実がある。レゾンデートル社が2023年に実施した4,000人規模の調査によると、既婚者の68.2%がセックスレス傾向にあり、男性の30代では71.4%がレス状態だった。完全なセックスレスに該当する人も41.8%にのぼる。
つまり、「うちだけがおかしい」のではない。むしろ多数派だ。
さらに注目したいのが、男性がセックスをしたくない理由の内訳。1位は「仕事で疲れている」(35.2%)、2位が「家族(肉親)のように思えるから」(12.8%)、3位は「出産後なんとなく」(12.0%)。「妻に魅力を感じない」ではなく、仕事の疲労やパートナーとの関係性の変化が主因なのだ。日本性科学会はセックスレスを「1か月以上性交渉がなく、今後もないと予想される状態」と定義しているけれど、その裏にある事情は一人ひとり違う。
断る夫の頭の中——5つのパターンを知る
本音ベースで整理すると、「したくない夫」の心理は大きく5つに分かれる。
①仕事の疲労と慢性ストレス
もっとも多いパターン。長時間労働や人間関係のストレスで心身が消耗すると、性欲より先に「とにかく寝たい」が勝つ。テストステロン(男性ホルモン)の分泌はストレスで低下するという報告もあり、本人の意志だけの問題ではないケースが少なくない。
②「家族化」——妻が母親に見える
子どもが生まれると、夫の中で妻が「子どもの母親」にスイッチしてしまうことがある。性的な対象としてではなく、家族としての安心感のほうが強くなる。これは愛情がなくなったわけじゃない。むしろ別の種類の愛着が育っている状態だ。
③過去に断られた経験のフラッシュバック
意外と多い。以前妻に誘いを断られた記憶が残っていて、「また断られるくらいなら誘わない」と壁をつくる。プライドの問題でもあるし、傷つきたくないという防衛反応でもある。
④加齢によるホルモン変化
健康長寿ネットによれば、日本人男性のテストステロン値は20代以降、10年ごとに約9.2%低下するという報告がある。45歳以上では約40%の男性がホルモン低下の状態にあるとされる。病気ではなく、体の自然な変化だ。
⑤性行為そのものへのプレッシャー
「うまくいかなかったらどうしよう」というED(勃起不全)への不安が先に立つケース。CLINIC FORの解説によれば、パートナーに対する心理的プレッシャーが原因の「心因性ED」は30代男性にも珍しくない。
完レス6年で私が手放した「正しさ」
言っちゃうけど、私は一度やらかしている。
産後2年のとき、夫を一方的に責める記事を出してしまったことがある。自分のつらさだけを前面に出して、夫の事情にはまったく触れなかった。反応は大きかった。でも読者の声を読み返してみたら、「うちの夫も同じ」という共感ばかりで、「夫側の気持ち」に触れたコメントはゼロだった。
あの記事を全面改稿して、夫側の心理にも1段踏み込んだら、PVは当時の月間最高を記録した。読者が本当に欲しかったのは「わかるよ」じゃなく、「じゃあどうすればいいの?」だったのだ。
あの経験から学んだことがある。レスの問題で「どっちが悪い」を決めにいくと、出口がなくなる。「したくない」側にも理由がある。そこを見ないまま責めたら、相手はもっと閉じる。一人称は強い。でも偏る。相手の視点を1段挟むだけで、届く層が変わるのだと痛感した。
今日から試せる3つの歩み寄りステップ
ステップ1:「触れる」をゴールにしない日常スキンシップ
セックスをゴールにしないこと。ソファで隣に座るとき肩に触れる、おやすみのときに手を握る。それだけでいい。私も朝6時に起きて子どもの支度をする生活のなかで、唯一意識したのは「いってらっしゃい」のときに夫の腕に触れること。小さな変化だったけど、これが空気を変えた。
ステップ2:「私はさみしい」をIメッセージで伝える
「なんでしてくれないの?」はYouメッセージ。責められていると感じてしまう。代わりに「私はあなたに触れてもらえないのがさみしい」と、自分の感情を主語にする。ポイントは、相手の返事を求めないこと。まず伝えるだけ。答えを強要すると、また壁ができる。
ステップ3:体の変化は「一緒に」調べる
加齢やストレスによるホルモン変化が疑われるなら、泌尿器科の情報を一緒に調べてみるのも手だ。「行ってきなよ」ではなく、「一緒に調べてみない?」。この一言の違いが、夫にとって「責められている」と「味方でいてくれている」の境目になる。
FAQ
セックスレスは離婚の理由になりますか?
法的には「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められるケースがあります。ただし、レス=即離婚ではなく、期間や双方の意思、改善の努力があったかなどが総合的に判断されます。まずは夫婦間の対話を試みることが先決です。
夫がEDかもしれない場合、どう切り出せばいいですか?
「最近体調どう?」から入るのが自然です。「EDじゃないの?」と直接聞くと防衛反応が出やすいので、健康診断の話題に絡めて「男性ホルモンの検査もあるらしいよ」と情報提供する形がスムーズです。
レスが続くと愛情もなくなりますか?
セックスの頻度と愛情は必ずしも比例しません。ただし、スキンシップや対話など「愛情確認の手段」がすべて途絶えると不安は蓄積します。体の関係だけに注目せず、日常の接点を増やすことが大切です。
妻から誘うのは恥ずかしいのですが、どうすればいいですか?
言葉で直接誘う必要はありません。「今日は子どもが早く寝たね」「久しぶりにふたりの時間だね」といった雰囲気づくりだけで十分。大事なのは「受け入れる用意がある」というサインを出すこと。結果を求めすぎないのがコツです。
参考文献
- 夫婦のセックスレスに関する実態調査(2023年・4,000人調査) — レゾンデートル株式会社, 2023年
- 男性の性腺機能低下症(LOH症候群) — 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
- 彼女や妻に対して勃たない男性は多い!?その原因・対処法を詳しく解説 — CLINIC FOR
- 既婚者の68.2%がセックスレス傾向―全国4000人調査 — nippon.com, 2024年






