日本の夫婦、約半数が「キスしていない」という事実

2024年5月、語学プラットフォームPreplyが20〜99歳のパートナーがいる日本人600人を対象に実施した調査によると、パートナーと「キスしない」「半年に1回より少ない」と答えた人は約48.4%にのぼる。ほぼ半数だ。

20代では「週1回以上キスする」が約69%。しかし30〜40代になると40%台に落ち、60代以上では「しない・ほぼしない」が82%を超える。つまり、結婚生活が長くなるほどキスは確実に減っていく。

筆者は探偵として500件以上の夫婦トラブルの現場を見てきた。そのなかで気づいたことがある。スキンシップ全般が消えるより前に、まずキスが消える。これは偶然ではない。キスの消失は、夫婦の親密さが壊れ始めている最初のサインだ。

元探偵が現場で見た「キスが消える3段階」

探偵時代、浮気調査の依頼を受けるたびにヒアリングで聞いていたのが「最後にキスしたのはいつですか?」という質問だった。この答えから、夫婦関係がどこまで崩れているかが驚くほど正確にわかる。

500件超の相談を振り返ると、キスが消えるプロセスには明確な段階がある。

第1段階:「ながらキス」の消失

朝出かけるときの「いってきます」のキス。テレビを見ながらの、なんとなくのキス。こうした「意識せずやっていたキス」が最初に消える。本人たちは気づいていないことが多い。忙しいから、子どもが見てるから——理由はいくらでもつく。でも実態は、相手に意識を向ける余裕がなくなっている。

この段階は、以前スキンシップが消える5段階の記事で体系化した「ながらタッチの消失」と同時期に起こる。手をつなぐ、肩に触れる、そしてキス。日常の「ながら接触」がまとめて消えていくフェーズだ。

第2段階:キスが「イベント化」する

日常からキスが消えたあと、誕生日や記念日、旅行先など「特別な場面」だけにキスが残る。普段はしない。でもイベントでは形だけする。

ここが厄介だ。「記念日にはキスしてるから大丈夫」と思い込む。しかし、キスが年に数回のイベントになった時点で、それはもう習慣ではなく儀式になっている。形は残っているが、親密さの実感は薄い。

第3段階:キスへの「違和感」が生まれる

最終段階では、キスしようとすると「なんか違う」「恥ずかしい」「気持ち悪い」という感覚が出てくる。ここまで来ると、相手を「家族」としては認識しているが「パートナー」としては見られなくなっている。

探偵時代に相談を受けた夫婦のうち、この第3段階に入っていたケースでは、ほぼ全員がセックスレスにも陥っていた。事実から逃げるな、と自分にも言い聞かせる話だが——キスへの違和感は、体の関係が断絶する直前の最後の警告だ。

なぜキスの消失が「セックスレスの入口」になるのか

日本性科学会の定義では、セックスレスとは「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上ないこと」を指す。ここで注目してほしいのは「セクシュアル・コンタクト」にキスが含まれている点だ。

つまり、医学的にも心理学的にも、キスは性的な親密さの一部として位置づけられている。キスがなくなるということは、セクシュアル・コンタクトの入口が閉じるということだ。

筆者がこれまでの相談対応で観察したパターンはこうだ。キスが消える→ハグが減る→体が触れること自体を避ける→セックスレス。この流れは一方通行に見えて、実は逆ルートもある。キスを戻せば、その先の親密さも戻る可能性がある。

ごまかすと深まる。これは浮気調査だけでなく、夫婦の親密さの問題にもそのまま当てはまる。「キスなんて別にしなくても」と流した結果、気づいたときにはベッドどころかリビングでも他人のような距離感になっている夫婦を、筆者は何組も見てきた。

キスを取り戻す3つのステップ

「今さらキスなんてできない」と思うかもしれない。それが普通の反応だ。だが、取り戻した夫婦も確かにいる。筆者が相談対応で実際に提案し、効果があった方法を3つ紹介する。

ステップ1:「おでこ」から始める

いきなり唇にキスしようとするから抵抗がある。まずは、おでこや頭にポンと触れるところから。「おやすみ」のタイミングでおでこに軽く唇をつける。これなら子どもへのスキンシップと同じ感覚で始められる。

ポイントは、相手の反応を待たないこと。反応がなくていい。習慣のリハビリだと思ってほしい。1週間、黙って続ける。

ステップ2:「ありがとう」と同時に触れる

感謝の言葉を伝えるときに、手や肩にさっと触れる。Preplyの調査でも、日常コミュニケーションで最も重視されているのは「感謝の表現」(25.0%)と「日常の小さな気配り」(24.0%)で、キスそのもの(6.8%)ではなかった。

要するに、相手が求めているのは唇より先に「自分を見てくれている」という感覚だ。言葉と接触をセットにすることで、触れ合うことへの心理的ハードルが自然に下がる。

ステップ3:「キスしていいか」を真面目に聞く

第3段階(違和感がある状態)まで進んでいるなら、不意打ちは逆効果になる。このフェーズでは、正面から「キスしてもいい?」と聞くことが重要だ。

恥ずかしい。気まずい。でも、まず認めるしかない。「キスしなくなったよな」と事実を言葉にするだけでも、ふたりの間に空気の変化が生まれる。筆者が見てきた再構築に成功した夫婦の多くは、この「恥ずかしさを超えて言葉にする」という一歩を踏んでいた。

ただし、相手が拒否した場合は無理に進めないこと。拒否の裏にある感情——疲れ、不満、不信感——に向き合う必要がある。キスの問題は、多くの場合リビングの問題がベッドに出ているだけだ。

FAQ

夫婦でキスしないのは普通ですか?

2024年のPreply調査では、パートナーと「キスしない」「半年に1回より少ない」と答えた人が約48.4%でした。統計上は珍しくありません。ただし「普通だから問題ない」とは限りません。キスの減少が夫婦の親密さ低下のサインになっているケースは多くあります。

キスしなくなったらセックスレスになりますか?

必ずしもイコールではありませんが、筆者の相談経験上、キスに違和感が出ている段階(第3段階)ではほぼセックスレスにも陥っています。キスは親密さのバロメーターとして非常に敏感な指標です。

キスを嫌がるパートナーにどう対応すればいいですか?

まず、嫌がる理由を決めつけないことが大切です。口臭などの物理的な理由から、関係への不満、過去のトラウマまで原因はさまざまです。「最近キスしてないけど、何か気になることある?」と穏やかに聞くところから始めてみてください。

子どもがいるとキスしにくいのですが、どうすればいいですか?

子どもの前でのキスに抵抗があるなら、おでこキスやほっぺキスから始めるのがおすすめです。子どもが寝た後の「おやすみキス」を習慣にするのも効果的です。大切なのは、子どもを理由にキスをゼロにしないことです。

参考文献